富士フイルム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長・CEO:後藤 禎一)は、皮膚内部構造を観察できるLC-OCT*1と独自のAIシステムを用いた画像解析技術を組み合わせ、皮膚の内部構造を非侵襲的に観察した結果、皮膚の内部構造(基底膜)と肌理(キメ)の形状に共通点があることを発見しました。本発見は、肌理(キメ)が皮膚内部構造(基底膜)と連動して失われるという、老化メカニズム解明の可能性を示す成果です(図1)。
今後、当社は、これらの研究成果を化粧品の開発に応用していきます。また、2025年7月4日より有楽町朝日ホール(東京都千代田区)で開催される「第50回日本香粧品学会学術大会」にて本研究成果を発表いたします。

若齢の肌と老齢の肌を比較観察すると、若齢肌ではキメの皮溝部の下層に皮膚の内部構造(基底膜)の凹部分が存在し、さらに皮膚の内部構造(基底膜)の凹凸構造が集中する箇所では皮膚(表皮)が相対的に厚いことが判明。キメが皮膚内部構造と連動して失われるという、老化メカニズム解明の可能性を示す成果と考えられる。
- *1 Line-field Confocal Optical Coherence Tomography(ラインフィールド共焦点光干渉断層撮影)の略称で、皮膚の内部構造を高解像度画像で非侵襲的に観察できる撮像機器のこと。
ヒトの皮膚は、表皮と真皮、皮下組織から構成されています。表皮と真皮の境界には、凹凸構造を持つ基底膜が存在します。また、皮膚の表面には皮溝と呼ばれる細い溝があり、その周囲に皮丘と呼ばれる肌が皮溝に囲まれ隆起している部分があります。この皮溝と皮丘がつくる紋様が肌理(キメ)と呼ばれます。
基底膜の凹凸構造は、加齢に伴って平坦になることが知られています。一方、キメも加齢に伴って失われることが分かっていますが、そのメカニズムは十分に解明されていませんでした。そこで、当社は、皮膚の表面と内部の構造を解析することで、基底膜の構造がキメの形状に与える影響を明らかにする研究を行いました。
当社は、皮膚の内部構造がキメの構造に与える影響を明らかにするため、LC-OCTでとらえた皮膚の内部構造を角層と表皮層(表皮細胞層)、基底膜、真皮層、キメに分類・表示できるAIシステムを開発。本システムを用いた当社の画像解析技術を活用することで、皮膚の内部構造とキメの凹凸構造を同時に可視化した3次元画像で観察する手法を確立しました(図2)。本手法は、皮膚の摘出時に組織構造を傷つけてしまう従来手法における問題点を解決し、皮膚内部構造をより正確に解析できるものです。

皮膚の内部構造とキメの形状を同時に可視化した3次元画像をもとに、キメの皮溝部と基底膜構造の位置関係を分析しました。その結果、皮溝の下層に、基底膜の凹部分が存在することを確認しました(図3)。本結果は、キメの皮溝部と基底膜構造の位置関係が高く相似していることに加えて、基底膜の凹凸構造とキメの皮溝部・皮丘部の位置関係も相似していることを示唆するものと考えられます。

さらに当社は、キメの皮丘部の皮膚厚みに着目し、基底膜の凹凸構造の上層にある皮膚(表皮)の厚みを測定しました。その結果、基底膜の凹凸構造が集中している箇所では皮膚が厚いことが明らかになりました(図4)。一方で、皮溝部では凹凸構造と皮膚の厚みに相関がないことが分かりました(データ不掲載)。本結果は、老化に伴い基底膜の凹凸構造が平坦化することで、皮丘部の皮膚が薄くなり、キメが失われる可能性を示唆するものと考えられます。

キメ(皮丘)の下層において基底膜の凹凸構造が集中している箇所では皮膚が厚いことが判明した。
株式会社 富士フイルム ヘルスケア ラボラトリー
化粧品事業部 マーケティング統括部
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